乗鞍スカイラインの開通日だった。次郎君と今季一番のバスで朴ノ木平駐車場から畳平へ向かった。天気は晴れ。風もほぼ無風。雪質は極上ザラメ。…で、ノートラック♪状態はかなり良い。(画像↑は重い。)
当初、壺足で行ける範囲内で、ジャンプ台を作れそうな場所を探すつもりの予定だった。大体、残雪の乗鞍は、畳平周辺でジャンプ台を作って気持ち良く飛ぶ事が目的の場合が多い。
…のだが、今回、そんな話しを門前さんに話したら、バックカントリーで使用する基本的なツールセットを借りられる事になり、更に、パイルドライバーで、もう1人分貸りる事が出来、壺足では行けそうにも無かった、山頂付近へこの時期に行けるんじゃねーかって、少し期待が持てた。(以下長文)。
もともと、BCに強い興味は無かったのだが、人の気配の無い静かな所や、露骨に自然の地形が残る場所を滑る事はとても好き。だから、スキー場周辺のアラウンドゲレンデと呼ばれる箇所は俺程度にとっては、格好の場所だったのかも。
そこを滑る事や、滑ってこれた事への大きな価値観的なものも無く、何となく、そーゆー裏道的な所を通る事が、ガキの頃に、雪遊びを覚えて依頼、好む。
そんな俺ですが、初めてスノーシューを履いて歩いて感動した…。足が沈まねーし、氷の上でも滑らねー。こりゃー、何処でも行けるわwって思うた。試に、急な所をわざわざ選んで登ってみるが、ハッキリ言って、「超余裕」。
…で、まずは“ジャンプ台”の作れそうなポイントを探すつもりで、富士見岳に登り、乗鞍岳山麓を見渡す事にした。……10分程で登れた。ベテラン様を始め、知っている方々にとっては、別に凄い事では無いのだろうが、雪で覆われたそこそこの急斜面を壺で登っていた頃に対し、スノーシューは直登で10分足らず。道具って凄い。
富士見岳の山頂から見る景色が好き。俺は山の事は解らんけど、綺麗な山の山頂に立っても、その山の姿は見えねーが、反対側からその山を見れば、まぁ、見えるわな。理屈っぽいが、富士見岳からは、贅沢にも、綺麗な山々が、360度、全て見渡せる位置に有る。しかも、バス停から、30分も掛からずに…。スノーシューなら、もっと短じけー。
富士見岳(2,817m)の山頂から畳平方面を見て、恵比寿岳(2,831m)、里見岳(2,824m)、コロナ観測所の有る摩利支天岳(2,872m)、朝日岳(2,975m)、そして乗鞍岳の主峰の剣ヶ峰(3,026m)が行けそうで、かつ、滑れそうな斜面に見えた。
開山日と言う事もあり、全ての斜面にトラックは無い。唯一、薄っすらと、開山前にエキスパートが残して行ったシュプールが、猫に引っかかれた蚯蚓(ミミズ)腫れの様に薄っすらと残るのみ。
ポイントを捜しに来たつもりが、こんな景色を見てしまうと、“登って滑る”をしたくなる。しかも、登れる道具が足元に有る訳だしw。ジャンプ台を作るポイントは、何箇所か抑えられたので、次は、“登って滑る”事にした。
“登って滑る”を決め、早々に挫折した…。調子コイテ、どこでも行けると思い込んだスノーシューで、急斜面をトラバースし、滑落しそうになった。
開山初日と言う事もあり、トラバースのラインがまだ薄く、面つるに近い状態だったのだが、まぁ、スノーシューで急斜のトラバースは出来ねーって事を知らねーって事だった。
アイゼンを履いてる方々は、軽快に安定し進むのに対し、俺は30cm進むのに、最初は5秒掛かった。しかも、一歩一歩、滑落の危険が付きまとう。後半、そこそこ歩けるようにはなったが、毛の生えた程度で、しかも、危険度に変りは無かった。
……迷ったが、引き返した。肩の小屋手前のトラバポイント…。剣ヶ峰が目前に広がる所。悔しいし、情けないし、勿体無い気持ちを覚えたが、“行ける所まで行く”的な行動目標は果せている。逝ってまってもしょうがねー。平地に戻れた時の安堵感ってないねw。これも経験。これを覚える事も、今回の目的。
ここ↑で引き返した。目の前に朝日岳と剣ヶ峰が見える。クライミングって、目的地が見えると、力が湧く。この湧き上がった力を別の行動に使おうw。
スノーシューでトラバースは難しいが、直登は比較的簡単にイケルって事を“覚えた”。コロナ観測所のある摩利支天岳の畳平側を登るが、そこそこの急斜なのだが…楽勝で登れるw。
…が、調子に乗って登り過ぎると、・・・戻れなくなる。急斜面でスノーシューを履いての降りは、かなり困難。経った一歩が戻れない。これは、文章じゃ伝えられないかも。やってみりゃー解る。スノーシューで急斜面での降りは困難って事を“覚えた”。
戻れないので先へ先へと四つん這いで進む。どんどんどんどん上へ上がり、最終的に立つ事の出来ない斜度へ到達した…。そこで、雪を堀り、なんとか立てるスペースを作ること15分、立つことは出来たが、四つん這いから振り向いた時に、眼下に広がる落差がリアルで、…足が竦んだ。
だがね…、山登りは下手でも、素人ながらにビビリながらでも、俺が登った斜面を、俺が滑るって言う、シチュエーションには、もしかしたら、価値が有るかも…って事に、少し思い入れを持てたかもしれねーなー。数十分を数秒足らずで…マスターベーショソに、近い。
スノーボードが上手いって…、どうも滑りだけじゃねーみてーな気になるのだが、上手い人々はどんな気持ちで、こういう所で滑るんやろー?…等と、若干まだ軽い高山病が逆に気持ち良い。